【焦点】宿泊業の外国人雇用 編集部 向野 悟


 2020年は、宿泊業における外国人材の活用が本格化しそうだ。19年4月に創設された在留資格「特定技能」は、制度の周知、技能測定試験の合格者数の増加に伴って雇用、就労の拡大が予想される。さらに宿泊業団体は、技能実習制度に基づく「技能実習2号」の対象職種に宿泊業を追加する手続きを進めており、国の認定を受ければ、20年度にも活用が始まる。

 「特定技能1号」は最長5年の在留が可能で、一定の日本語能力と宿泊業技能測定試験の合格が要件。これまでの宿泊業技能測定試験の合格者数は、国内とミャンマーの試験の合計で728人。今後も国内外で試験が実施される。採用活動や生活支援、費用負担など、新制度への様子見もあり、出足は鈍いが、観光庁は全国でセミナーを開くなど活用を促進している。

 一方の技能実習制度は国際貢献などが趣旨で、人手不足対策を掲げた特定技能制度とは目的、仕組みなどが異なるが、制度的には長年の運用実績がある。技能実習2号は、在留期間が1号を含めて通算3年。宿泊業団体では、宿泊業の対象職種化を目指し、国と詰めの手続きに入っている。

 既存の在留資格「技術・人文知識・国際業務」などによる旅館・ホテルへの就労も増加。留学生などが旅館・ホテルに就職するケースも増えている。

 旅館・ホテル経営者の外国人材に関する方針はさまざまだが、全体的には雇用に前向きな業種だ。日本政策金融公庫の調査(19年12月発表)によると、旅館・ホテルは、非正社員を含めて外国人を雇用している企業の割合が32.0%、雇用に関心がある割合が61.3%。飲食業のそれぞれ12.3%、34.6%を大きく上回っている。

 旅館・ホテルが外国人材に関心を持つ理由は、地方部を中心として日本人の人材が確保しにくいといった人手不足の問題が大きい。他方で政府が訪日外国人旅行者数6千万人の目標を掲げる中、インバウンドの集客に外国人材を活用したいという施設は少なくない。

 外国人が日本で就労を希望する背景には経済的な目的もあり、また、国内では移民に関わる問題に慎重な意見も多いが、訪日6千万人の実現は、その消費が地域を潤すだけでなく、国が今以上に開かれるという側面がある。観光先進国となれば、日本の宿泊産業で働きたい外国人も増えるだろう。旅館・ホテルが外国人にも、日本人にも働きたい業種として選ばれるよう産業の振興、個々の経営向上を図るべきだ。 

 
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